”地域密着”スポーツという言葉が、スポーツチーム運営の文脈でよく使われると思います。そして、”企業”スポーツ、という言葉が、対比として存在していると思います。
一般的に、Jリーグは、ドイツのサッカーリーグを見習って地域密着スポーツを目指し、日本のプロ野球は、企業スポーツ、ということかと思います。
なお、日本で言えば、企業スポーツであるプロ野球ファンが2,099万人、地域密着スポーツであるJリーグファンは788万人と、プロ野球ファンの方が倍以上の規模です。
出展:三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングとマクロミルによる共同調査
企業スポーツは、親会社の広告宣伝が主となるため、それがビジネスの中で優先順が下がってしまうと、縮小・撤退が起こり得ると言えます。一方、親会社の意向をしっかり掴めば、安定した運営が期待できます。
地域密着スポーツは、親会社のような盤石なバックボーンに欠けますが、逆にビジネスとか合理性とは異なるアングル、すなわち地域のアイデンティティである、という理由でサポートを受けることが出来ます。
NBA(バスケットボール)、MLB(野球)、NFL(アメリカンフットボール)、アメリカのいわゆる三大スポーツは、チームに地域名が入っていて、地域密着型になっています。
一方で、日本は海外と比べても、オリンピック選手を社員として雇うなど、企業スポーツ運営が長く続いてはいます。また、IT企業がプロスポーツチームを自社で運営しているケースも多くありますが、海外ではあまりない事例です。
Jリーグが一番分かりやすいのですが、”日本代表が国内プロリーグの頂点にあって、世界と戦うビジネスモデル”がプロスポーツ界では当たり前になっています。
なんだかんだ言って、代表チームが強くて世界を打ち負かすことで、スポンサーや投資家、ファンが集まり、資金力が増すと同時に競技力も向上していきます。
Jリーグを更に大きくするためには、多すぎるクラブ数を絞ってリソースを集中してプレミア化して、”クラブJリーグ”で世界に挑戦するべき、と仰っていたJリーグの役員さんのお話も聞きました。
宇都宮ブリッツェンをはじめとして、JCLに加盟してくれている自転車ロードレースチームは、地域密着型を謳っています。
そして、各チームは、思ったのです…「マイナースポーツとしては地域密着型には拡大と成長に限度があるぞ?!」と。地域の限られたリソースを、例えば地域のほかのスポーツと奪い合うことは健全ではないですよね。
その結果の答え=”野望”は、地域密着型の連合体として、大きな経済圏を作っていく、それがJCL(ジャパンサイクルリーグ)の立ち上げの根底となるモデルなのです。
そして、JCL発足3年目になって、ある意味教科書通りにJCL TEAM UKYOというJCL代表チームを立ち上げ、世界に送り出そうとしています。
各チームとの議論中なので、合意が取れていない大胆な内容もありますが、例えば、地域密着型の連合体・経済圏拡大の方法論としては以下が想定されます。
■メジャーリーグサッカーのように、全チームの選手をJCLが一括雇用する(登録問題は要検討)
■全チームの運営機能(ミドル・バックオフィス)をJCLで統合して合理化する
■地域密着型レース(=ホームチームがいる)だけど、国際レースとして世界と戦う舞台がある
■地域密着型チームが若手を発掘し、その希望・将来キャリアとして世界へのプロルートをJCLが持っている
■中央集権的にJCLに権益が集まっているが、JCLには多くの投資家がおり、資本主義的ガバナンスが図られている
JCLは、民間のベンチャー企業であり、前提を疑って考えるべきこと・できることは沢山あります。
特に最後のところが肝でありまして、チームの合議体(ある意味カルテル的)であるリーグというのは、時として意思決定のスピードや利害調整に時間がかかって足並みが揃いません。しかし、リーグに中央集権がなされ、その価値を一番ケアする複数の投資家によるガバナンスがあれば、適切な判断を迅速にできる確率が上がる、というメリットは考えられます。
まあ、それも完璧ではありませんが……責任ある判断者がだれで、それが結果どうなったか、は明確になってきます。